医療トピックス

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予防医学2016 アスタリール®シンポジウム特集

セッションU 見た目と女性医学 美容、更年期克服…広がる研究領域

座長 神戸大学名誉教授 市橋 正光氏

シンポジウムのセッションUでは「見た目と女性医学」の研究成果が紹介された。青山エルクリニック(東京都港区)の杉野宏子院長は女性の大きな悩みである毛穴の改善に関する研究を報告。さらに、陳瑞東クリニック(東京都港区)の陳瑞東院長は、閉経による女性ホルモン減少のデメリット対策の一つとしてアスタキサンチンの研究調査を行い、成果を紹介した。

青山エルクリニック院長 杉野 宏子氏

「毛穴を目立たなく」 確認

アスタキサンチンを美容の分野に応用できないか。そのような思いから、サプリメントの内服と美容液の塗布によって顔面の毛穴が目立たなくなるかどうかを調べた。

アスタキサンチンの美容効果として、肌のしみやしわ、水分含有量の改善が知られるが、毛穴や顔面の見た目の変化や酸化ストレスレベルとの関係はまだ解明されていない。

そこで、アスタキサンチンのサプリメントの服用と美容液の顔面への塗布による顔面の見た目、酸化ストレスレベル、QOL指標がどのように改善していくのかを調べた。対象は43人で、全員女性。うち37人に3カ月間毎日、サプリメント12ミリグラムの服用とアスタキサンチン含有美容液1ミリリットルの1日2回塗布をしてもらった。残りの6人は服用・塗布を未使用の群とした。

顔面の見た目の変化については皮膚画像解析装置(VISIA)で調べた。このシステムはカラー写真や紫外線写真、偏光写真を同時に撮影し、しみやしわ、毛穴など9項目の状態を数値化して解析することができる。自覚症状やQOL指標の変化については日本抗加齢医学会のQOL共通問診票に、皮膚に関する項目を追加して細かく調べた。

その結果、内服・塗布群では未使用群に比べ、VISIAでのしみ、毛穴が統計学的に有意に減少していた。有意差は認められなかったが、しわが著しく改善しているケースもあった。QOL共通問診票においても、目尻の小じわや肌のくすみなど肌の状態は、未使用群と比べ有意に差が示された。

また、心と体の自覚症状については、QOL共通問診票により、内服・塗布群は腰の痛みや肩こり、疲れやすさ、筋肉痛、便秘などの自覚症状が有意に改善した。これらはアスタキサンチンによる血行改善効果と考えられた。

今回、特筆すべきことは、毛穴の状態の改善だ。毛穴はしみ、しわと並ぶ女性の大きな肌の悩みだが、有効な治療法はあまりない。毛穴がなぜ目立ってくるかというと、皮脂中に不飽和脂肪酸が多く、そのため炎症性サイトカインの産生が亢進し表皮肥厚や不全角化が起こり、毛穴が開き深いすり鉢状になるからだ。

アスタキサンチンの抗酸化作用で、炎症を抑制し、毛穴周囲の表皮肥厚と不全角化を抑えることにより、毛穴が目立たなくなったと考えられる。見た目の変化とともに体を内側から改善していくことは重要である。

陳瑞東クリニック院長 陳 瑞東氏

更年期女性の疾病予防 期待

女性ホルモンには抗酸化作用があり、閉経は結果的に活性酸素を上げるのではないかと考えられている。そこで抗酸化物の摂取が有用な対策になると予想されるので、アスタキサンチンの服用の意義を調査した。 女性は閉経するとLDLコレステロールや中性脂肪値が高くなり、脂肪肝の頻度も50代で上昇する。また、女性ホルモンの減少により、更年期や閉経期の女性は心血管疾患の発生リスクが上昇するが、原因の一つに酸化ストレスが関与している。

アスタキサンチン12ミリグラムを6カ月以上服用した周閉経期の女性24人では、d−ROMs検査(酸化ストレス値の測定)は低下傾向、BAP検査(抗酸化力の測定)は上昇傾向にあることが認められ、アスタキサンチンの有用性が期待された。

この点を明確にするため、周閉経期の女性30人において、アスタキサンチンを3カ月間、毎日12ミリグラム服用する15人と成分のない偽薬を同様に服用する15人を比較した。3カ月の服用期間では、アスタキサンチンが酸化ストレスに影響を与える結果は得られなかった。しかし、肝機能障害を診断するALT、ASTの数値は統計的にも有意に改善し、アスタキサンチンが肝臓疾患の発生予防に寄与することが期待される。

更年期以降の女性にとって、いわゆるメタボ予防は健康寿命を謳歌するうえで重要なテーマである。中でも肝機能を正常に保つことは、脂肪肝の予防にも関連する。婦人科領域ではエストロゲンの補充がこの予防に有用と報告されているが、投与量によってはかえって酸化を促進する可能性もある。

また、ホルモンに関連するがんの発生に関与する可能性もあり、更年期症状のない健康な中高年女性にとってホルモンの補充療法を受けるかどうか、判断に苦しむ場合が少なくない。

今回のアスタキサンチンの結果は天然物であるため、強力な効果があるとはいえないが、サプリメントとしての意味はあると考えられる。

50歳を超えた女性にとって見た目の美しさは健康のあかしの重要な尺度といえる。そのために、1日40分程度の歩行といった軽い有酸素運動、炭水化物を減らし、緑黄色野菜を十分に摂取し、良質なタンパク質をとるといった食事のバランスに注意することは大切であり、さらに食事だけでは摂取に限界がある場合にはアスタキサンチンのような栄養補助食品も考慮に値すると考えられる。健康寿命を謳歌するうえで一番大切なのは楽しく、続けることに尽きるからである。

第10回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る