シンポジウム

自分の体はジブンで守る 〜ストレスに強い体と核酸栄養〜

司会
吹田明日香氏 (キャスター)
コーディネーター
宇住晃治氏 (ライフ・サイエンス研究所代表)
パネリスト
村田健二氏 (カリフォルニア大学デイビス校特任准教授)
金藤理絵氏 (リオデジャネイロ五輪競泳女子金メダリスト)
加藤健志氏 (東海大学水泳部監督兼ヘッドコーチ)

食品の成分について、単なる栄養やおいしさだけでなく、さまざまな生体調節を行う「機能性」が次々と明らかになる中、健康とのかかわりを考えるシンポジウム「これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る〜ストレスに強い体と核酸栄養〜」(産経新聞社主催、フォーデイズ特別協賛)が1月31日、東京都内で行われた。10回の節目となった今回は「ストレス」がテーマ。社会の高度化で現代人が激しいストレスにさらされているだけでなく、ストレスが命にかかわる病気の発症に大きく関係することが最近の研究で報告されている。最先端の研究者の講演のほか、五輪競泳金メダリストの金藤理絵さんらもステージに上がり、会場を埋めた参加者は耳を傾けた。

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「ストレス克服」 食、心構え・・・対策探る

ライフ・サイエンス研究所代表 宇住晃治氏

1954年生まれ。東京大学医学部卒。同研究生受託研究員などを経て現職。NPO法人KYG協会理事長、医療法人社団KYG医療会 会長などを務める。専門は核酸栄養学、予防医学。

コーチの言葉の積み重ねがストレスやプレッシャーに打ち勝つ要因になった(金藤氏)

金藤: リオデジャネイロ五輪決勝のとき、私は5コースだったので、1コースの人より入場が後になり、スタートまでの持ち時間が短くなるので、先にゴーグルをつけるかどうか迷っていました。また、レース後に報道の人から「どういう気持ちでレースに臨みましたか」とよく聞かれるので、今、どういう気持ちなのかを考えていました(会場から笑い)。代表選考会のときは、“その場所に立てるのがうれしい、応援してもらえるのがうれしい”と思っていたのですが、このときは“選考会とはまた違った気持ちだな”と思いながらも、結局はどんな気持ちか答えが出ないままレースを迎えました。

加藤: コーチ席はプールの端の、観客席の中でも一番遠いところにあり、そこで見ていました。すごい接戦で、強敵はもちろん、新星も4人いて、ものすごく緊張しました。

金藤: 泳いでいる途中はストロークの数を数えながら泳いでいました。ふだんの練習も数えながら泳いでいるので、覚えていなくてもレースの中ではカウントして泳いでいます。

宇住: ほかのことは考えていないのですか。

金藤: 前半しっかり食らいついていけるようにということを考えていたのですが、あまり考えても集中できなくなるので、基本的にストローク数だけですね。2番手でターンできたのですが、2015年までは6位とか7位でターンすることが多かったのです。このときは意識が変わっていたので、“トップでターンするのだ”という気持ちでレースに臨んでいました。

村田: 隣のレーンの人は目に入るのですか。

金藤: 近すぎる場合、前を泳いでいる人はほとんど見えなくて、自分の手のかきの波が隣の人の波に見えてしまうこともあり、焦ったことも過去にはありました。ラスト50メートルは“今まで通りの泳ぎをすれば大丈夫だ、大丈夫だ”と言い聞かせていました。“いける”と思うと脳の中での刺激で動きが速くなってしまうので。

村田: 1位だとすぐに自覚できたのですか。

金藤: タッチした瞬間、“私が1位なのかな?”と。優勝は2分19秒台になると予想していたので、自分のタイム2分20秒30という数字を見たときに、“掲示板上でコースとタイムと順位がずれていないかな”と確認していました。だから喜びを表現することができなかったです。

加藤: 自分の席からではターンの際の差がよく見えないので、ラスト50メートルでは胃に穴が10個あくほどでした。

宇住: 勝った瞬間の感想は?

加藤: あまりカッコよくないのですが、“これで日本に帰れる”と思いました。ホッとして、人生で初めて、腰が抜けて倒れ込みました。

宇住: 金メダルを取るという経験は普通の人ではできません。その前後の血圧の変化など興味がありますね。太古の人間が野生動物に出合って逃げるときのストレス、そしてそこから解放されるということをはるかにしのぐ、普通の人間では体験できないことをここでは体験しているので、測定してみたかったですね。

リオデジャネイロ五輪競泳女子金メダリスト 金藤理絵氏

1988年生まれ。広島県立三次高、東海大体育学部卒。2016年リオデジャネイロ五輪競泳女子200メートル平泳ぎで金メダル。競泳日本代表の主将も務めた。現在、「ぎふ瑞穂スポーツガーデン」(岐阜県瑞穂市)の指導員も務める。

加藤: 心拍数はウエアラブル端末でいつも計測し続けているのですが、そのときは160を超えました。ふだんは60くらいです。アドレナリンやドーパミンが大量に放出されたのだと思います。

吹田: 加藤コーチがそのような中、金藤選手はスタート時から非常に冷静で驚いたのですが。4年間のトレーニングの結果が2分あまりで出てしまう、というときに、普通ならドキドキして想像できないような緊張だと思うのですが、とても冷静でいらしたのですね。

金藤: 2015年の世界選手権のときは“メダルが取れなかったらどうしよう”とも考えていたのです。しかし、今回は、実は申し訳ないのですが、準決勝があまりよくなかったので、水泳界では「金メダルを必ず取らなければ」なのですが、一般社会向けには、“銀でも銅でもメダルを取れば何とかなる”と。プレッシャーやストレスから一瞬逃げたわけですが、以前はそれらに向き合おうとして跳ね返されていました。けれども、このように考えることで、ストレスやプレッシャーと真っ正面から取っ組み合わずに済み、うまくいったのかな、とも思います。

吹田: どうやってそのように変えることができたのですか。

金藤: 自然にそうなったのですが、もしかしたら、加藤コーチから、「自分が一番だと演じなさい」「絶対に勝ちたいと思うようにしなさい」と言われ、その積み重ねがストレスやプレッシャーに打ち勝つ要因になったということはあるのではないでしょうか。

宇住: 監督のおかげということもあるのでしょうか。

加藤: 私はふだん、皆さんの前では激しいところは見せないのですが、練習中は全く違います。本番が楽に思えるよう、本番よりも追い込みます。五輪が一番のストレスにはなってはいけない。そのためには五輪前の6月後半の高地でのトレーニングで最も強いストレスをかける。そのために、本当はしたくないのですが、金藤選手にかなりきつく当たることもしました。練習の中で「今の1本の泳ぎは人生の中で最高に頑張ったのか」「お前が金を取りたいというからすべてをかけてやっているのに、そんな中途半端な気持ちでこちらを巻き込むな」「世界中の人が金を狙っているのだから、そんな気持ちなら帰ってしまえ」と怒鳴ったりもしました。意識して言っているので、怒鳴りながらも冷静でした。

金藤: 最近の人たちはストレスと向き合うということがあまりないのかな、とも思います。例えば、部活の中で厳しい先輩と優しい先輩でそれぞれ役割があるように、厳しいコーチと優しい親、ということでいえば、大変恐縮ですが、優しさの認識を間違えている親が多いようにも思います。「厳しいかもしれないけど、コーチはあなたのことを考えてやっているのだから頑張ろうね」というのが、“アメとムチ”でいえば、いわゆる本当の“アメ”だと思うのですが、最近は「厳しいのだったらもういいのでは」という親が多いのかなと感じます。ストレスやプレッシャーに一緒に立ち向かっていくというのがなくなってきているのかな、とも思います。だからストレスやプレッシャーに負けて精神的に病んでしまったり、体調を崩してしまう人も多いのかなと思いました。

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第10回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る
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