シンポジウム

「傷ついた遺伝子があなたの寿命を縮める!!

これからの健康と栄養を考えるシンポジウム「傷ついた遺伝子があなたの寿命を縮める!〜核酸栄養で健康寿命の延長を〜」(昭和大学、産経新聞社主催 フォーデイズ特別協賛)が2月18日、福岡市で開かれた。病気になりにくい体をつくるには、健康や長寿をつかさどる遺伝子の働きを促すことが重要で、そのために「核酸」と呼ばれる栄養素の摂取が効果的という興味深い研究データなどが紹介された。

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老年期を元気で満足する状態へ 昭和大学 片桐敬学長

日本人の平均寿命は現在、女性が90歳、男性が80歳にならんとしており、少子化とともに高齢化社会の急速な到来が近づいています。人間誰しも長生きをしたい、よい人生を全うしたいと願うものですが、寿命があり“不老不死”の理想は達することは不可能です。

私ども昭和大学の「アンチエイジング」講座では80年、90年という長い人生の間、とくに最後の3分の1から4分の1に当たる期間について、元気で満足する状態で老いる研究を目指しています。

お話しいただく講師の先生方は、DNAなどの細胞核の中にある物質が、身体の栄養にとって必要であるという研究をしています。今回はその研究の一端として、「核酸」関連物質の摂取が食文化を改善し、老年期に起こってくるいろいろな不都合を抑える力があるのではないか、という研究結果を皆様にご紹介します。

遺伝子発現には核酸が関与

〈まつなが・まさじ〉1944年生まれ。北海道大学、京都大学卒。京都大学工学博士、昭和大学医学博士。食品素材としての核酸の普及に努める。

遺伝子(DNA)には生命の設計図がいろいろと書かれているが、なかには「がん遺伝子」や「リウマチ遺伝子」などの病気や老化に関するものもある。ただ、これらの遺伝子があれば必ず発症するとはかぎらない。喫煙やストレス、暴飲暴食などの生活習慣によって病気の遺伝子が目を覚ましたり、逆に生活習慣が良ければ病気を治癒する遺伝子が働いたりする「遺伝子発現」と呼ぶ仕組みが解明されている。

“がんになりやすい家系”“糖尿病の血筋”といった遺伝体質を知った上で、生活習慣の改善や栄養摂取によってこうした発現をコントロールすることを「遺伝子栄養学」という。

例えば、遺伝子発現にはサケの白子由来の核酸・核タンパク(核タンパク=核酸とタンパク質の複合体)が影響することを我々は見い出した。サケの白子から抽出した核タンパク成分などを用いた実験では、体内のエネルギー代謝に不可欠なATP(アデノシン三リン酸)合成にかかわる遺伝子の発現が確認されている。

さらに約2万2000種ある人間の遺伝子のうち、約4200種に核酸栄養による何らかの発現がみられることも分かった。具体的には、骨の形成や肥満防止、糖尿病予防、循環器病の改善、コラーゲン産生につながる遺伝子だった。

また、人間の皮膚細胞を培養したものに核タンパク成分を与えた実験では、長生きにつながる長寿遺伝子などが目を覚ますことも分かった。

一方、線虫を使って、サケ白子抽出物が老化にどう影響するかを調べた実験では、平均寿命が20%伸びたり、ストレス耐性が増したりすることも判明。具体的には遺伝子を損傷してしまう活性酸素を解毒する酵素の発現がみられた。

核酸食で脳血管障害予防も

〈しおだ・せいじ〉1974年早稲田大学卒。医学博士。米国チューレン大学医学部客員教授、昭和大学アンチエイジング医学寄附講座を兼務。研究テーマは神経細胞死の防御、神経再生医学など。

脳は年をとるにつれ、だんだん萎縮し、内部の神経細胞も死んでいく。さらに脳の血管には動脈硬化が起きて血流が届かなくなり、その結果、老化による脳の病気が発症する。脳の病気は大きく分けて、血管障害による脳梗塞や脳卒中と、神経細胞の老化に伴うアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患がある。これまでの動物実験で、核タンパク質を与えたマウスはそうでないマウスに比べ、脳梗塞が起きても生存率が高いことが分かっている。核タンパク質は血管の拡張を促して血行を改善し、細胞死を抑え、脳の機能低下を抑制できる。核酸食をとることで脳梗塞などの脳血管障害を予防し、治療の改善に役立つ可能性があると考えられる。

一方、神経変性疾患は、神経細胞の遺伝子に何らかの異常が起き、その細胞内で特定のタンパク質が過剰に生成され、不溶性の蓄積物(アミロイド線維)となることで発症する。我々は、試験管内にこの蓄積物を人工的につくり、核タンパク質を入れてその変化を調べたところ、蓄積物を減らすことが分かった。つまり、アルツハイマー病などでみられるアミロイドの沈着を核タンパク質が制御し、病気の発症予防や治療に役立つ可能性があることも分かってきた。

パーキンソン病の場合、中脳の黒質と呼ぶ部分の神経細胞が変性・壊死し、神経伝達物質のドーパミンが減って大脳皮質の情報が脊髄まで届きにくくなり、運動機能障害が起きると考えられている。そこで、核タンパク質を与えたマウスとそうでないマウスに、黒質の神経細胞を変性させる薬を与えて運動機能を低下させたところ、核タンパク質を与えたマウスは明らかに運動機能が改善に向かう効果がみられ、神経細胞死も抑制された。

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