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下肢静脈瘤手術「スーパーグルー療法」 医療用接着剤を血管に注入

からだのレシピ

国内の潜在的患者が1千万人ともいわれる下肢静脈瘤(りゅう)の治療で、医療用接着剤を患部の血管に注入して血管をふさぐ最先端の治療が欧米に続いて、日本でも始まった。日本での治療実績が3月、学会で初めて発表された。医師らは「麻酔が原則不要となり、体への負担が軽減される」と画期的な療法に期待している。

麻酔が原則不要 東京血管外科クリニック

今井智弘院長

榊原直樹医師

この治療方法は「スーパーグルー療法」と呼ばれる。グルーは英語で接着剤の意味で、人体に安全な接着剤が欧米で開発され、医療に応用された。日本で着目したのは東京血管外科クリニック(東京都文京区)だ。同クリニックの今井智浩院長は新治療方法の安全性を確保するにあたり、チームを結成。下肢静脈瘤や心臓血管外科を専門とする榊原直樹医師は欧米の医師から直接指導を受けた。看護師も海外研修して技術を研鑽(けんさん)した。

榊原医師は3月19日、金沢市で開かれた第81回日本循環器学会学術集会で、治療実績に関するスタディーの概要を初めて発表した。それによると、平成28年6月から今年3月にかけて、東京血管外科クリニックなどで下肢静脈瘤と診断され、体への負担が少ない(低侵襲)治療方法を希望する患者30人にスーパーグルー療法を行った。患者は平均年齢62.8歳(21〜70歳)、うち女性は20人だった。

榊原医師は同療法について「血管をほんの数ミリ切り、そこから細い管で接着剤を注入する。注入後は、血液の逆流を起こしていた血管は内側からふさがれ、症状が改善する」と説明する。治療時間は最短で10分。同治療を受けた30人はいずれも、下肢静脈瘤のこぶが消え、治療後の有害事象も見られず、学会の発表では安全性が担保されたことも示された。

下肢静脈瘤治療の進歩は近年目覚ましく、かつては血管を外科手術で引き抜くストリッピングという治療法があったが、その後、血管をレーザーで焼くレーザー療法が登場した。

これに続くのがスーパーグルー療法で、榊原医師は欧米で使われている2種類の接着剤を比較検討し、臨床に応用した。

榊原医師は江戸川病院(江戸川区)で下肢静脈瘤センター長のほか、順天堂大学非常勤講師を兼務。学会で発表したスタディーには天皇陛下の心臓手術の執刀医として知られる順天堂大学医学部の天野篤教授(心臓血管学)も共同研究者として参画した。

最大の特徴について、今井院長は「レーザー治療の場合、レーザー照射の熱による痛みを抑えるため麻酔が必要だが、スーパーグルー療法は熱をかけないため痛みがほとんどなく、麻酔が原則不要になった」ことを挙げる。しかも、血栓症のリスクが軽減され、治療後の弾性ストッキングの長期間着用が不要となる。治療後、当日でも航空機を使用して海外旅行に行けるようになる。当面は低侵襲の治療方法を望む患者向けに自由診療で治療している。

同療法に関して、国内で最も症例が多いとされる東京血管外科クリニックでは事務局を設け、患者や医療関係者からの相談を受ける。問い合わせは事務局(電)03-3556-4103へ(月曜から土曜、午前10時〜午後7時)。

生活習慣病に熟成ニンニク抽出液 湧永製薬が発表

予防・改善に有用

糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病にかかる医療費は日本の医療費の約3割を占めており、予防が大きな課題となっている。

湧永製薬(大阪市淀川区)では、このほど熟成ニンニク抽出液が生活習慣病の予防・改善に有用であるとする研究成果を発表した。

糖尿病や脂質異常症などが進行すると大動脈に脂質が沈着し、動脈が狭く硬くなり動脈硬化症につながる。そこで血管への脂質沈着について同抽出液が及ぼす作用をマウスを使って検討した。

試験期間は12週間。対象を(1)正常マウスに普通食を与えたもの(2)動脈硬化マウスに普通食を与えたもの(3)動脈硬化マウスに同抽出液を混ぜた餌を与えたもの−3群(1群当たり6〜7匹)に分けた。結果は動脈全体に対する脂質沈着面積が(1)群に比べ(2)群は約90倍の広さになっていたが、(3)群は(2)群より22%の減少が見られた=グラフ。同抽出液が動脈への脂質沈着を抑制し、動脈が硬くなりにくいことを示唆している。

また、糖尿病に関与する血中タンパク質の糖化と肥満抑制因子についても評価した。血中タンパク質は高血糖が続くと糖化し合併症を引き起こすものであり、肥満抑制因子は、糖尿病が進行すると減っていく。

期間は19週間で、糖尿病マウスに同抽出液を餌に混ぜ、投与した。試験結果は抽出液を混ぜた餌を与えた糖尿病マウス群が、普通食を摂取した糖尿病マウス群に比べ20%の糖化タンパク質の減少となった。肥満抑制因子は抽出液を混ぜた餌を与えた糖尿病マウス群が普通食の糖尿病マウス群より93%の増加。高血糖で起きる障害を防ぐ働きを示唆している。

同社の主幹研究員、森原直明氏は「熟成ニンニク抽出液だけで複数の働きを持つため医薬品とは異なる薬効の可能性があり、今後も研究を進める」と抱負を語った。(宇山公子)

日本医師会 赤ひげ大賞

日本医師会赤ひげ大賞第5回受賞者 瀬戸上健二郎医師

引退後「しばらくゆっくり」

「日本医師会 赤ひげ大賞」(主催・日本医師会、産経新聞社)の第5回受賞者・下甑(しもこしき)島(鹿児島県薩摩川内市)の瀬戸上健二郎さん(76)は38年間勤めた下甑手打診療所を3月末に退職した。離島医療をテーマにした漫画「Dr.コトー診療所」のモデルでもあった瀬戸上さんに近況や離島・僻地(へきち)医療の今後について聞いた。

せとうえ・けんじろう

鹿児島県薩摩川内市下甑手打診療所前所長。昭和16年、同県東串良町生まれ。76歳。鹿児島大医学部卒。鹿児島大付属病院、国立療養所「南九州病院」勤務を経て、53年から平成28年9月末まで同診療所長。29年3月末で医師を引退した。離島・僻地医療の充実と向上に精力的に取り組んできた。離島医療をテーマにした漫画・ドラマ作品「Dr.コトー診療所」のモデルにもなった。

「しばらくは、ゆっくりあか落としをしたい−」。引退後は、ゆっくりと体をいたわり体調を整える。医療との関わりについては「何かできることがあればと軽い気持ちで、特にこれといった計画を立ててはいない」と話す。島での日々は「仕事が楽しくないといけないが、生活も楽しくないといけない」と振り返る。若い頃は村の人たちとバレーボールやソフトボールに興じていた。また、島に来た当初は毎週のように山に入っていた。下甑島というと海釣りを目的にした観光客が多いイメージがある。島は海も楽しいが、山が楽しいと語る瀬戸上さんは島の山々について「山好きにはこたえられない」と登山を推す。いろいろな花が咲いていて四季折々の景色を楽しむことができる。

島全体が貴重な自然に囲まれている下甑島。その中でも瀬戸上さんのお気に入りは瀬々野浦。週に1度は通っている。島の名物、ナポレオン岩も見えるこの場所は「いつ行っても何か話題がある」という。季節の話題に始まり、住んでいる人々との会話に花が咲く。仕事をしていたときにも息抜きになって元気をもらえる場所だったそうだ。

下甑島の医療や離島・僻地医療の今後についても心配はしていない。診療所の後任、内村龍一郎所長(52)について「問題なくピリッとやってくれているから安心して引退できる」と話す。下甑島をはじめとした離島の医療や今後の僻地医療についても、各大学の医学部に卒業後の決められた期間、過疎の進んだ地方などで働く「地域枠」の募集があり、全国から応募が集まっている。瀬戸上さんが着任した昭和53年と比べても、医師の数はおおよそ2倍だ。瀬戸上さんの後任がなかなか決まらなかった理由には診療所には人工透析ができる設備があるなど、ある程度経験を積んだ医師でないと厳しいことが背景にあった。

今回の赤ひげ大賞受賞後、医療関係者以外の知人からも多くの祝電が届き、赤ひげ大賞は全国区の賞だと反響に驚いたという。

「赤ひげ大賞」

主催:日本医師会、産経新聞社
ホームページ http://www.akahige-taishou.jp/

第10回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る