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苦しいぜんそく、適切な治療で改善 ガイドラインは吸入ステロイド推奨

からだのレシピ

専門医で検査し自分にあった方法を

気温が変化するいまの季節はぜんそくが多発する時期だ。ぜんそくの治療は吸入ステロイド療法が登場するなどこの20年で劇的に進歩した。ただし、一部の情報に振り回されて、不適切な治療を受けたり、治療そのものも受けない場合もある。専門家に適切な治療方法について聞いた。

20年で劇的に進歩

大谷義夫
池袋大谷クリニック院長

「私たち専門医がぜんそくと診断し、治療の方法を考えるとき、ガイドラインに基づいて、第一選択は吸入ステロイドになります」と話すのは、年間、延べ2万人のぜんそく治療を行っている呼吸器専門医、池袋大谷クリニック(東京都豊島区)の大谷義夫院長(兼東京医科歯科大学臨床教授)だ。

ぜんそく治療の指針を示した「喘息予防・管理ガイドライン2015」によると、症状が最も軽い治療ステップ1から最も重い同4の患者まで投与の量は異なるものの、いずれも第一選択薬に吸入ステロイドが推奨されている。

大谷院長は「一部で吸入ステロイドの副作用の可能性を誇張する記事が出て、ステロイド治療に対して不安を抱える人もいる。しかし、吸入ステロイドの場合、口から吸い込むステロイド剤の量は微量で、しかも直接、気道や気管に作用することが期待される。その点が血管を介して全身に薬の作用が回る経口薬と大きく異なっている」と指摘。ただし、「どの薬剤でもそうだが、吸入ステロイドの副作用の可能性もゼロではないので、副作用が出るかどうか定期的にチェックしながら、この薬を慎重に使っている」と話す。

ほこりやストレス

放生雅章
NTT東日本関東病院呼吸器センター長

ぜんそくは室内のほこりやストレスによっても引きおこされ、例年だと、花粉症や気温の急激な変化によって春にも患者が増える。NTT東日本関東病院(東京都品川区)呼吸器センター長の放生(ほうじょう)雅章医師は「かぜが治まっても、“ヒューヒュー”“ゼーゼー”の症状やせきが止まらない人は、ぜんそくを疑った方がいい」と話す。

放生医師によれば、正確な診断がつかない場合は、呼吸器の専門病院などで、肺の炎症の度合いを調べる「呼気NO(一酸化窒素)検査」や肺活量などを測る「呼吸機能検査」を受ける方法があるという。

ぜんそくは空気の通り道である気道が炎症によって狭くなって、ひどくなった場合、発作につながる病気だ。その炎症にはステロイド剤が作用し、狭窄(きょうさく)には気管支拡張薬が作用し、この両方の効果が一度に期待できる配合剤も近年、登場している。

放生医師は「ぜんそくの治療は地域の医療機関との連携が大切だ。検査は専門病院で行い、診断がついたら、地元のかかりつけ医に戻り、治療を継続するのが望ましい。心配な人は自分に合った治療について呼吸器の専門医に相談した方がいい」と呼びかけている。

杉田玄白賞に東京農工大大学院・木村特任准教授

食材選択に焦点、医食同源に合致

「解体新書」の発刊を手がけ、医食同源の考えの普及に努めた杉田玄白の業績を顕彰してその名を冠した第15回杉田玄白賞の表彰式が10日、玄白ゆかりの地である福井県小浜市で開かれた。今年の受賞者は「食と腸内環境に基づいた生活習慣病」の研究で成果を挙げた東京農工大大学院の木村郁夫特任准教授に決まり、関係者とともに受賞の喜びを分かち合った。

木村氏は食が肥満や病気に影響するとの食品科学の観点から研究に従事。そのうち、食と腸内環境の研究は2013年に英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載され、さらに今年はネイチャー本誌にインタビュー記事が掲載されるなど国際的な認知度も高い。受賞に際して「食べ物と病気の中間に位置する人の体への影響については今までブラックボックスだった」と前置きし、研究によって「その謎のメカニズムを解き明かし、食が生理機能にいかに結びついているかを突き止めた」と表明。今後は「玄白の名に恥じないようにさらに精進したい」と述べた。

審査委員長の須藤正克氏(福井大学特別顧問)は木村氏の研究に関して「腸内環境と生活習慣病の関係を世界に先駆けて科学的に証明した。国際的にも評価が高く、文句なしの受賞だった」とたたえた。副委員長の河原和夫氏(東京医科歯科大学大学院教授)は「木村氏は食材の選択に焦点を当て、多くの人が活用できる、示唆に富む研究成果をまとめ上げた。玄白が大切にした医食同源の趣旨に合致する」と木村氏の業績を評価した。

玄白は江戸時代に、若狭小浜藩の藩医として現在の小浜市に居住するなど同市にゆかりが深い。同市などが主催する玄白賞は「食と医療」「健康増進」「食育」に関する研究・地域活動を行っている研究者、団体が対象。

今年の奨励賞には生活習慣病の予防に有効な食べ方を盛り込んだ「1日1膳プロジェクト」を推進した武庫川女子大の森真理講師が選ばれた。

表彰式で同市の松崎晃治市長が「どちらの受賞者も、素晴らしい研究や取り組みで、玄白とゆかりのある小浜市としても喜ばしい限りだ」と述べた。

杉田玄白賞の表彰式に臨む木村郁夫氏(左から3人目)ら=福井県小浜市

メディカルメークアップで皮膚の変色など自然にカバー

生まれつき、あるいは後天的要素により起こる母斑、白斑、血管腫、事故の傷痕、やけどの痕などの皮膚の変色・傷害を専用の化粧品で覆い隠し、自然で健康的な肌に見えるようにする「メディカルメークアップ」という技術がある。メディカルメイクアップアソシエーション(MMA)は、皮膚疾患をもつ人へのメディカルメークアップの技術指導、メークを指導するアドバイザーの養成などを通し、メディカルメークの普及活動を行っている特定非営利活動法人だ。皮膚に変色や傷害があるため人前に出るのが苦手など悩みを抱えた人が、このメークによって支障なく日常生活を送り気持ちを前向きなものに変えていくことができるように、精神的な面も重視し支援事業をしている。

同法人で使っている化粧品「カバーマークオリジナル」は、1928年に、顔にあざがある血管腫のため多くのつらい思いを経験したリディア・オリリーという米国の女性が発明している。発明から約30年後、広島の原爆投下により被爆しケロイドの治療に米国を訪れた23人の日本女性に、化粧品一式が贈られたことで日本でも知られるようになり、やがて、国内の化粧品会社が扱うようになる。皮膚の変色は現在では治療できるものもあるが、治療が終了するまで時間がかかるため、その間、メディカルメークでカバーしてもいい。化粧方法は一般的なものとほとんど同じで、水にぬれても取れずプールに入ることもできる。子供も使用可能という。

同法人の事務局長を務める小井塚千加子さんは、自らも母斑をもち、カバーマークオリジナルを取り扱った化粧品会社で長年、メークの研究・実践を積んできた経験がある。その経験を生かし、皮膚疾患で悩む人の相談にのり、メークの技術指導とアドバイスを行っている。「最近は抗がん剤の副作用で皮膚のくすみ、シミ、赤みが出てしまう、あるいは年を取りシミがひどくなってしまい暗い気持ちになるという人も訪れる。悩んでいるなら、ちょっとお化粧をし、カバーして明るく生きることが大切」と話す。(宇山公子)

左:メーク前、母斑が目立つ
右:メーク後、母斑が消え自然な仕上がり

脳エクササイズで認知症予防

ネスレ日本「ブレインHQ」で発症リスク半減

ブレインHQについて語る
ヘンリー・マンカ博士

現在、約4人に1人が65歳以上の高齢化社会を迎えている日本において、認知症は誰もが避けることのできない問題となっている。2025年には認知症有病者は約700万人、高齢者の5人に1人の割合になると推計される(2014年度『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』厚生労働科学特別研究事業)。

カナダ・トロントで7月に開催された「国際アルツハイマー病会議」で、脳トレーニングプログラム「スピードトレーニング」を利用した大規模介入試験が認知症の発症リスクを48%低下させたという研究結果が、米国のサウスフロリダ大学のジェリー・エドワーズ博士によって発表された。健康な65歳以上の男女約2800人を対象にした無作為比較試験で、10年間追跡調査を行っている。同プログラムを初年度、1年後、3年後と合計11時間以上実施したグループと実施していないグループの認知症発症率を10年後に比較したところ、実施したグループでは発症リスクが48%低下していた。

この「スピードトレーニング」は、現在、ポジット・サイエンス社が脳エクササイズ「ブレインHQ」の名前で提供している。先頃開催された「日本認知症学会」のセミナーでも、来日した同社CEOのヘンリー・マンカ博士が、「ブレインHQ」の認知症発症リスク減について報告した。同エクササイズは、1970〜90年代に行われた多くの実験で証明された、大人になってからの脳も変化することができるという「脳可塑性」の理論に基づいている。目や耳などの感覚器を使い情報を吸収する力をトレーニングし、脳の処理速度、記憶力、注意力などを高める。

マンカ博士は「食事や運動など脳にいいと言われているが、誰も実験で証明していない。認知症発症リスク低下が認められた研究はこれが初めてだ。このエクササイズは人種・性別・年齢など関係なく効果が見られる。途中でやめても長期間効果は残っているが次第に消えていくので継続することが望ましい」と語る。国内ではネスレ日本が「ブレインHQ」の日本語版の提供をしている。(宇山公子)

スポーツクライミングを科学する

日本臨床スポーツ医学会が公開シンポジウム

一般社団法人日本臨床スポーツ医学会(川原貴理事長)は来年1月28日(土)、「2017年日本臨床スポーツ医学会公開シンポジウム スポーツクライミングを科学する」と題したシンポジウムを開催する。

同医学会はスポーツ医学の全科にわたる臨床医相互の学術研究、情報交換、臨床研修を全国規模で図るため、1989年に発足した。これまでも公開シンポジウムなどでスポーツ医学に関する情報発信をしてきたが、今回は2020年の東京五輪の正式種目になったスポーツクライミングをテーマとし、現役アスリートやさまざまな立場の専門家による講演を通じてスポーツ医学への理解を深める機会とする。

日時 2017年1月28日(土)午後2〜5時
会場 ステーションコンファレンス東京サピアタワー6階「605」
参加費 無料(定員220人・先着順)
出演 明治大学教授・水村信二氏、クライマー・保科宏太郎氏、クライマー・小林幸一郎氏、医師・六角智之氏、日本山岳協会・小日向徹氏
応募方法 2017年1月6日(金)までに(1)「日本臨床スポーツ医学会公開シンポジウム参加希望」(2)氏名(3)年齢(4)職業(5)住所(6)参加希望人数を記入し、事務局までFAX(03・3766・1351)またはメール(rnsp@rinspo.jp)。
第10回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る
あなたの医療・介護体験を募集します 「心に残る医療」体験記コンクール  日本医師会