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食事・運動・社会参加 真の健康長寿を実現

からだのレシピ

第30回日本臨床内科医学会市民公開講座「真の健康長寿社会をめざして−こころとからだの健康とは−」が10月10日、東京・新宿で開かれた。特別講演では小笠原流礼法宗家・小笠原敬承斎氏と東京都健康長寿医療センター理事長・井藤英喜氏が登壇し、健康長寿を実現していくうえで、分かりやすいアドバイスが送られ、会場に集まった市民が聞き入った。

1日に緑の濃い野菜100グラム目安、15分以上の運動を

菅原正弘氏

開会に先立ち、同学会の会長を務める菅原正弘氏は、健康長寿に向けた注意点として「血管」「脳」「体」「がん」「たばこ」を挙げた。血管とは心筋梗塞や糖尿病、高血圧といった生活習慣病の予防を、脳は認知症対策を、体は転倒・骨折を防ぐための運動や筋トレを指す。そしてがん検診を受診することの大切さと、心筋梗塞や脳卒中、アルツハイマー病と関係しているたばこのリスクについて話し、生活習慣の改善を訴えた。

また井藤氏はデータを交えて、老後を健康に過ごすための方策を解説した。日本では今後、地方よりも都市部が急速に高齢化し、また2035年には高齢者世帯の3分の2は1人住まいか夫婦のみ世帯になるとみられている。高齢者を支えるための医療・介護費の逼迫(ひっぱく)も指摘されるなか、元気な高齢者が「支える側に回る」可能性を含め、元気な高齢者を増やしていくことが大切だ。一人一人が健康を保っていくにはどうすればよいのだろうか。井藤氏は「一説では寿命の70〜80%はライフスタイルが決定づけます」と、生活習慣の見直しを訴えた。

井藤英喜氏

特に食事、運動、社会参加を意識することで加齢とともに起こる多くの病気の予防につながると力説。「食事はコメばかりでなく、肉・魚・卵・大豆製品などのタンパク質を。緑の濃い野菜を1日100グラムを目安に取るほか、果物、牛乳なども大切です。運動は1日15分以上、ウオーキングなら3千歩を、少なくとも週に1回は継続して行うことが第1目標になります。社会参加としては趣味やボランティアなど、週に1度は外出を」とアドバイスした。フレイル(要介護状態と健康の中間)の状態にあるときも、この食事・運動・社会参加の3点を見直すことで、健康を取り戻しやすくなる。

またこの日、同医学会は記者会見を行い、低用量アスピリンが、特定の高齢者で心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げるという結果が得られたことを発表した。糖尿病、高血圧、高脂血症の危険因子がある人を対象に調査したもので、70歳以上で血中のHDLコレステロール値が低い(40未満)男性のうち、アスピリンを投与されたグループは、これらの病気が発症する危険性が56%下がったという。

有識者からこころとからだの健康についての
アドバイスが送られた

水溶性食物繊維で生活習慣病撃退

日々の食事があらゆる病気に関係しているという

糖尿病や高血圧に代表される生活習慣病は合併症を引き起こすと、それぞれ失明や足の切断、あるいは心筋梗塞や脳梗塞に発展する恐ろしい疾患である。日々の生活の中で何を心がけたら予防できるのか。さまざまな方法が推奨される中で、食生活の見直しが近道と説く書物が出版された。

「糖尿病 高血圧 肥満はこれで撃退!」(悠光堂)は、病気と食物繊維摂取の関係について詳しく解説している。酵素栄養学の第一人者とされる鶴見隆史氏と、化学者の小嶋良種氏による共著だ。

食物繊維の中でも水に溶けやすい水溶性食物繊維の不足が生活習慣病の増加の一因と指摘する。不足するようになったのは「戦後の食卓から野菜、豆類、キノコ類が減り、代わって肉、卵、乳製品などをたくさん食べるようになった」結果だという。

水溶性食物繊維の働きについては「腸内の善玉菌の餌になって腸内細菌のバランスをよくする。小腸で吸収されず、大腸で主に吸収される特質をもつ」と説明。このため、糖の吸収が緩やかになり、血糖値の急激な上昇を防ぎ、糖尿病予防につながるほか、高血圧や脳卒中、心臓病の防止にも効果が期待できるという。

本書ではメキシコの砂漠で育つアガベに水溶性食物繊維が豊富に含まれると紹介する。もちろん国内で手に入るキクイモ、ニンニク、タマネギ、ゴボウ、またはミカンやリンゴなどの果物、コンブやワカメのような海藻にも多く含まれており、意識して料理に取り入ることを勧めている。

生活習慣病は自覚症状のないまま進行していくことが特徴とされる。ただ、毎日の便をチェックすれば、兆候をつかむことができる。もし、黄色っぽい便なら短鎖脂肪酸の作用で健康な腸になっているが、黒っぽい便なら悪玉菌が支配する不健康な腸になっている可能性が高い。

「腸の調子がよければ全身の調子もよくなる。食物繊維の摂取を増やせば、あらゆる生活習慣病と無縁になる」(同書)。専門家の意見に耳を傾け、自分に合った方法で食生活を見直すことが大切だろう。

日本医師会 赤ひげ大賞

日本医師会赤ひげ大賞第4回受賞者 高見徹医師

鳥取・日南町国民健康保険日南病院名誉院長:「地域づくりをする医療」伝授

「どうしたら1人暮らしの高齢者を救えるのか。この町で学び、その手法を都市部に伝えることをライフワークにしていきたい」

訪問診療を続ける高見医師

たかみ・とおる

日南町国民健康保険日南病院名誉院長。専門は内科。昭和24年、鳥取県生まれ。66歳。東京大医学部保健学科、鳥取大医学部医学科を卒業。鳥取大付属病院を経て、平成5年日南病院副院長、9年から17年間、院長。27年3月に役職を降りるが、現役医師として外来、訪問診療の現場で地域医療を支え続けている。

日本で最も高齢化が進んでいる地域の一つである鳥取県日南町は日本の30年後の姿ともいわれている。日南町国民健康保険日南病院の高見徹名誉院長は「一番の課題は地域医療を継ぐ後進の医師をどう育てるか」と話す。後進を育てる試みとして約10年前から鳥取大学医学部や県西部医師会、米子市福祉保健課の協力を得て同市の義方校区にて情報の共有を行い、日南町で学んだ「地域づくりをする医療」を医学生に伝える場を設けている。

昭和60年に日南病院へ派遣された時、地域における医療の大変さを実感し、高齢化社会の医療の負担をどう軽減するかを考え続けてきた。そして、病院を核として医療や保健、介護、福祉などのサービスを一体的に提供するサービスにたどり着く。

日南病院は「町は大きなホスピタル」をスローガンに掲げ、地域づくりをする医療に取り組む。その過程は3段階に分けられている。第1段階は「どこで誰がどんなふうに暮らしているか」を把握。「『誰かが心不全で運び込まれた』という状況があった場合、ヘルパーさんを通して、『家に飲まなければいけない薬が余っている、薬を飲んでいない』ことを知る。再発防止のために、薬を飲むようにヘルパーさんを通して指導する。そのまま帰してしまっては、再発防止ができない」と地域を挙げての協力体制を敷く。第2段階は医療・保健・介護・福祉の一体的サービスの実践。週1回、保健師やヘルパーら地域の医療保健関係者が集まり、45分ほどの在宅支援会議で状態に変化のあった30〜40人分の情報を共有する。「5年、10年と続けていくうちに、このやり方でいいということが分かってきた」という。第3段階では住民、医療・保健・介護・福祉の関係者、行政トップの連携が出来上がる。「地域医療はこの3つの段階をらせん状に進んでいくことに気付くことになった」

地域医療をきっちりとこなすことで地域が支える体制づくりを進め、高齢化を乗り越える。「20年後、30年後に日本が医療的に苦しくなる時がくる。日南町はまだまだたくさんのことを教えてくれる。そこで学んだ方法を都市部に伝え『地域づくりをする医療』を考える医学生を育てていきたい」と語る。

「赤ひげ大賞」

主催:日本医師会、産経新聞社 特別協賛:ジャパンワクチン
ホームページ http://www.akahige-taishou.jp/

第10回 これからの健康と栄養を考えるシンポジウム 自分の体はジブンで守る
あなたの医療・介護体験を募集します 「心に残る医療」体験記コンクール  日本医師会